陸マイラーに人気のANA VISAワイドゴールドカードというクレジットカードがあります。
年会費1万円オーバーと高額ですが海外旅行保険が「最高補償額 5,000万円」であることをアピールポイントのひとつにしています。
でもこのカードの病気やケガの“治療”に対する補償額はわずか150万円です。
アメリカで救急車で運ばれて、病院に入院して、手術をして、、なんてことになったら150万円では足らない可能性があります。
「ゴールドカードだから無条件で大丈夫」ということは絶対にありません。
というわけで、今回は海外旅行保険にまつわる知識とクレジットカードで補償を充実させる方法を紹介したいと思います。
なお本記事はクレジットカードに付帯される海外旅行保険の基本的な解説と会員本人のみの補償を充実させる方法について紹介しておりますので、家族旅行の際の家族の保険について詳しくご覧になりたい方はこちら↓の記事を参照下さい。
Contents
海外旅行保険の種類
まずは「海外旅行保険」と言っても様々な補償がありますので、その内容を紹介したいと思います。(クレジットカードに付帯されていない保険も含みます)
補償名 | 説明 |
---|---|
傷害死亡・後遺障害 | 事故によるケガで死亡または後遺障害が残った場合の補償 ※病気による死亡・後遺障害は対象外 |
傷害治療費用 | ケガをした時の治療や入院費用の補償 |
疾病治療費用 | 病気になった時の治療や入院費用の補償 ※持病の悪化と歯科治療は対象外 |
救援者費用 | 医療通訳、日本や第三国への搬送にかかる費用 ケガや病気で入院した場合に日本にいる家族が現地に向かう費用 遭難などで本人の捜索にかかる費用などの補償 |
賠償責任 | お店やホテルなどのモノやレンタルしたモノを壊した時の補償 ※レンタカーで人身事故を起こした場合は対象外 |
携行品損害 | 身の回りの持ち物が壊れたり、盗まれた時の補償 ※置き忘れによる紛失は対象外 |
航空機寄託 | 飛行機の搭乗に際して預けた荷物が時間内に届かなかった場合の 衣類などの購入費用の補償 |
航空機遅延 | 飛行機の出発が遅れた場合の宿泊費や飲食費の補償 |
弁護士費用 | 損害を被って賠償請求をするのに弁護士を雇う費用や弁護士に相談する費用 ※クレジットカードの保険には付帯されていない |
緊急費用 | 不測の事態によって旅行を中止せざるを得ない場合や 渡航中にやむを得ず帰国する場合にかかるキャンセルや交通費などの補償 |
保険金を受け取る機会が多い補償は?
ジェイアイ傷害火災保険HPによると、海外旅行に行って保険の適用を受けるようなアクシデントに合う確率は3.40%で29人に1人だそうです。(2016年度実績)
そして、発生確率が高いのは
- 治療・救援費用(傷害治療費用、疾病治療費用、救援者費用、疾病応急治療・救援費用を含む) 51.5%
- 携行品損害 30.9%
- 旅行事故緊急費用 (航空機遅延、航空機寄託手荷物遅延を含む) 13.7%
この内、携行品損害は持ち物の金額以上に損害が大きくなることはないため、よほど高価なものを海外に持っていかない限り被害額は限定的です。
また、航空機遅延、航空機寄託手荷物遅延についても掛かる費用は高くても数万円レベルです。
海外旅行保険の中で重要なのは「傷害治療費用」「疾病治療費用」「救援者費用」ということになります。
知れば知るほど恐ろしい海外の治療費事情
日本では健康保険制度により、医療サービスを受けた際の自己負担は1~3割です。
さらに、医療費がとんでもなく高額になった場合でも高額療養費制度により、年収毎に決められた額を上限に返還されますので、保険外の治療や手術を除いて、支払いが何百万円になることはまずありません。
ところが、海外で治療を受けるとなると事情が一変します。
こちらは日本損害保険協会HPに掲載されている盲腸(虫垂炎)の手術入院となった場合の都市別の総費用と平均入院日数です。
都市 | 総費用(円) | 平均入院日数 |
---|---|---|
ホノルル | 256万円 | 2日 |
ロサンゼルス | 162~217万円 | 2日 |
ロンドン | 130~174万円 | 2~3日 |
ゴールドコースト | 102万円 | 2~3日 |
バリ | 83~88万円 | 3日 |
メキシコシティ | 76~87万円 | 5~6日 |
シェムリアップ | 65~87万円 | 3日 |
パリ | 86万円 | 3日 |
シンガポール | 15~77万円 | 1~2日 |
モスクワ | 53~62万円 | 2日 |
オークランド | 57万円 | 3日 |
バンコク | 51万年 | 2~3日 |
サンパウロ | 42万年 | 3日 |
クアラルンプール | 23万円 | 3~4日 |
上海 | 11万円 | 7日 |
よく「アメリカは医療費が高い」と言われますが、本当に高いです。
アメリカ以外でもほとんどの国で数十万円の治療費が必要になります。
ジェイアイ傷害火災保険HPには、2016年度内に治療・救援費用で300万円以上の保険金を支払った事故の一覧が掲載されており、
腹痛を訴え受診。急性虫垂炎と診断され13日間入院・手術。(イギリス) 支払い保険金:741万円
激しい腹痛を訴え受診。腎臓結石・尿管結石と診断され6日間入院・手術。(イギリス) 支払保険金:333万円
ホテルのバスルームで滑って転倒し足を強打。脛骨・腓骨骨折と診断され11日間入院・手術。家族が駆けつける。看護師が付き添い医療搬送。(イタリア) 支払保険金:578万円
ゴルフコースでプレイ中、コース内にある岩場で足を挫いて救急車で搬送。足関節脱臼骨折と診断され6日間入院・手術。(グアム) 支払保険金:471万円
など70件の事例が掲載されています。
また2016年度特に高額だった事例として
ホームステイ先の居間で口から泡を吹いて倒れ救急車で搬送。脳炎と診断され19日間入院。家族が駆けつける。医師・看護師が付き添いチャーター機で医療搬送。(カナダ) 支払い保険金:3,890万円
地下鉄のエスカレーターで服の裾を巻き込み転倒し救急車で搬送。頭部外傷・骨盤骨折と診断され24日間入院。家族が駆けつける。医師・看護師が付き添いチャーター機で医療搬送。(オーストラリア) 支払保険金:1,582万円
など1,000万円を超える保険金支払いとなった5例が掲載されています。
ジェイアイ傷害火災保険の年間契約件数は100万超と公表されてますので、
1,000万円以上の支払いとなる確率は、約20万分の1
300万円以上の支払いとなる確率は、約1.4万分の1
ということになります。(保険契約者を分母とした割合)
ちなみに、ジャンボ宝くじの2等 1,000万円が当たる確率が0.0001%、1回に10枚セットで買うとすると10万回に1回当たる確率ですので、1,000万円以上の支払いになるのは2等を当てるよりも難しい確率ということになります。
毎年交通事故で亡くなる方が約3万人に1人ですので、300万円以上の支払いをする可能性もかなり低いと言えます。
そして、300万円以上の支払いとなった事例のうち約半数近くが65歳以上のシニアとなっていまして、全保険契約の年代内訳がわからないものの、65歳未満は相対的に確率が低いと思われます。
海外で治療を受けた場合は、「海外療養費」という制度によって、帰国後に支払った医療費の一部の払い戻しを受けることができます。
例えば海外で医療費を50万円支払った時、同じ医療を日本で受けた場合に30万円かかるとすると、その内自己負担(3割)で払う9万円を差し引いた21万円が払い戻されます。
つまり、「海外で受けたのと同じ医療を日本で受けた場合に、健康保険で負担してもらえるはずの金額と同額が戻ってくる」という制度です。
この制度により、海外で医療を受けた場合もある程度補てんをしてもらえますが、海外の医療費が高いことを考えると過度の期待は禁物です。
というわけで、
- 海外で入院をするような病気やケガをした場合、数10万円以上の費用がかかる
- 300万円以上の費用がかかるような病気やケガをする確率は限りなく低い
- ただし1,000万円以上の費用がかかる事例もある
- 海外旅行保険で最も重要なのは「傷害治療費用」「疾病治療費用」「救援者費用」
ということが言えます。
この後紹介しますが、クレジットカードの海外旅行保険で補償できる額(疾病・傷害治療費用)は、頑張れば2,000万円くらいまで上積みできます。
しかし、海外旅行保険の為にクレジットカードを何枚も持つことになり、正直煩わしいので現実的には500~1,000万円くらいの補償に落ち着くことになります。
ですので、可能性がかなり低いとは言え、正に「万が一」にも対応できるようにしたいという方は、クレジットカードではなく海外旅行保険の無制限プランへの加入をお勧めします。
ちなみに私は、独身であれば「クレジットカードで疾病・傷害治療費用で1,000万円の補償を確保した上で、海外旅行保険には入らないようにする」と思いますが、子供がいるため慎重にならざるを得ません。
クレジットカード付帯の海外旅行保険 ~基礎編~
続いて、前述の必要額のイメージを踏まえつつ、クレジットカードに付帯される海外旅行傷害保険の内容とおすすめのクレジットカードを紹介していきたいと思います。
年会費無料おすすめクレジットカード
年会費無料のクレジットカードでも海外旅行保険を充実させることが可能です。
まずは海外旅行傷害保険が自動付帯で、かつ傷害・疾病治療費用の補償額が高いカードを紹介します。
エポスカード | REX CARD | 横浜 インビテーション カード | プラスハッピー UCカード | Booking.com カード | |
---|---|---|---|---|---|
カード年会費 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 |
引受保険会社 | 三井住友海上火災 | 三井住友海上火災 | 三井住友海上火災 | 損保ジャパン日本興亜 | 三井住友海上火災 |
付帯条件 | 自動付帯 | 自動付帯 | 自動付帯 | 自動付帯 | 自動付帯 |
死亡・後遺障害 | 500万円 | 2,000万円 | 2,000万円 | 2,000万円 | 300万円 |
傷害治療費用 | 200万円 | 200万円 | 200万円 | 150万円 | 100万円 |
疾病治療費用 | 270万円 | 200万円 | 200万円 | 150万円 | 100万円 |
賠償責任 | 2,000万円 | 2,000万円 | 2,000万円 | 2,000万円 | 2,500万円 |
携行品損害 | 20万円 ※免責3,000円 | 20万円 ※免責3,000円 | 20万円 ※免責3,000円 | 20万円 ※免責3,000円 | 20万円 ※免責3,000円 |
救援者費用 | 100万円 | 200万円 | 200万円 | 100万円 | 150万円 |
キャッシュレス診療 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
保険期間 | 最長90日間 | 最長90日間 | 最長90日間 | 最長3ヶ月 | 最長90日 |
自動付帯と利用付帯
クレジットカードに付帯される海外旅行保険には「自動付帯」のものと「利用付帯」のものがあります。
自動付帯は文字通り、カードを持っているだけで保険が適用されるタイプで、海外旅行の際の手続きは不要です。
利用付帯は、その海外旅行のパッケージツアーの代金をクレジットカードで支払ったり、あるいは旅行に際して公共交通機関の支払いにカードを使った場合に有効となるタイプです。
海外旅行保険が付帯されているカードとしてメジャーな楽天カードやリクルートカードは、実は利用付帯のカードですので、持っているだけでは保険が適用されません。
利用付帯の場合は毎回海外旅行の度にカードの支払いを忘れずにする必要があり、正直煩わしさを感じます。
保険期間
クレジットカードの保険期間のスタートは旅行開始、終了は旅行から帰宅した時になります。(保険毎にさらに細かい条件があります)
保険期間は最長90日または3ヶ月のものがほとんどです。
3ヶ月を超える長期の滞在にはクレジットカードの保険は使えませんので注意が必要です。(一部、利用付帯のカードで海外で利用することによって、保険期間を延ばせるものもあります)
キャッシュレス診療
キャッシュレス診療とは、治療費などを保険会社が直接病院などに払ってくれるサービスのことです。
キャッシュレス診療に対応していないと、一度全額自分で支払い、後ほど保険金をもらうという流れになります。
一度に数百万円の請求になった場合、その全額を立て替える必要がありますので、その病院がクレジットカード対応してくれれば問題はないのですが、そうでない場合は一時的に多額資金が必要になります。
上表に挙げたカードはすべてキャッシュレス診療に対応していますので、いざという時にも安心です。
ただし、キャッシュレス診療は各保険会社が提携している病院でないと対応できないため、マイナーな国やあまりにローカルなエリアの病院では対応できない可能性もあります。
補償額は合算可能
クレジットカードに付帯される海外旅行傷害保険は、複数枚のカードを持っている場合に補償額の合算が可能です。
具体的には、死亡・後遺障害は合算できず持っているカードの中で最高額の1枚のみ有効です。
死亡・後遺障害以外の補償については、持っているカードで合算が可能です。(時折、例外的に合算が認められないカードもあります)
上表のカードはすべて合算が可能なカードですので、全5枚を保有した場合の補償額は以下のようになります。
※本会員 | 全5枚合算 | エポスカード | REX CARD | 横浜インビテーション カード | プラスハッピーUC カード | Booking.com カード |
---|---|---|---|---|---|---|
死亡・後遺障害 | 2,000万円 ※ここだけ最高額 | 500万円 | 2,000万円 | 2,000万円 | 2,000万円 | 300万円 |
傷害治療費用 | 850万円 ※合算 | 200万円 | 200万円 | 200万円 | 150万円 | 100万円 |
疾病治療費用 | 850万円 ※合算 | 270万円 | 200万円 | 200万円 | 150万円 | 100万円 |
賠償責任 | 1億500万円 ※合算 | 2,000万円 | 2,000万円 | 2,000万円 | 2,000万円 | 2,500万円 |
携行品損害 | 100万円 ※合算 ※免責各3,000円 | 20万円 ※免責3,000円 | 20万円 ※免責3,000円 | 20万円 ※免責3,000円 | 20万円 ※免責3,000円 | 20万円 ※免責3,000円 |
救援者費用 | 750万円 ※合算 | 100万円 | 200万円 | 200万円 | 100万円 | 150万円 |
この5枚すべて保有すれば、傷害・疾病治療とも最大850万円の補償を確保できます。(後述のクレジットカードも併用すれば1,000万円以上にすることも可能です)
ただ、保険の為だけにクレジットカードを5枚も保有することにやや抵抗感もあると思います。
その場合は、エポスカードとREX CARDの2枚で傷害治療400万円、疾病治療470万円、救援者費用300万円という手もあります。
これだけの補償額があれば、先ほどの事例のほとんどで対応可能になります。
エポスカード
エポスカードは、
- 年4回マルイで開催される「マルコとマルオの7日間」で10%OFF
- イオンシネマ500円引き、ロイヤルホスト5%OFFなど10,000店舗での優待
- ネット通販でポイント2~30倍になる「たまるマーケット」
など特典が充実しています。
さらに、エポスカード社から招待を受けると永年無料のエポスゴールドカードを手にすることが可能です。
- 疾病・傷害治療補償が300万円にアップ
- 最大ポイント還元率3.0%&ポイント無期限
- 空港ラウンジ利用
など、間違いなくコスパ最強のクレジットカードです。(詳しくはこちら↓)
REX CARD
REX CARD(レックスカード)はどのお店でカードを利用してもポイント還元率1.25%という高還元が魅力のカードです。
貯めたポイントは、カードの引き落としの値引きに使うことができるのが便利です。
年30万円以上利用するならREX CARDと同じジャックスが発行する「リーダーズカード」もオススメです。
リーダーズカードはREX CARDよりも若干ポイント還元率が高いことに加えて、Gポイントに交換可能なのでマイルを貯めることもできます。(詳しくはこちら↓)
Booking.comカード
Booking.comカードは、Booking.com経由でホテル予約すると10%OFFになるGenius会員特典が付いてきます。(先着5万名限定)
Genius会員になると、割引の他にも部屋のアップグレードなどを受けられるホテルもあります。
通常の決済ポイントも100円につき1ポイントと還元率が高いのも魅力です。
傷害・疾病治療費用は各100万円と他の4枚のカードに比べると劣りますが、持っていて損のないカードだと思います。
逆に「カードの枚数を増やしてでももっと補償額を増やしたい」あるいは「もうちょっと別のカードも検討したい」という方はこれらのカードを検討してみるのもよいと思います。
※本会員 | JCB EIT | OricoCard Visa payWave | OricoCard PayPass | 龍馬カード | LiSAカード | ソードアート・ オンラインカード |
---|---|---|---|---|---|---|
カード年会費 | 無料 | 年1回のカード利用で無料 | 年1回のカード利用で無料 | |||
引受保険会社 | 損保ジャパン日本興亜 | 損保ジャパン日本興亜 | あいおいニッセイ同和損保 | |||
付帯条件 | 自動付帯 | 自動付帯 | 自動付帯 | |||
死亡・後遺障害 | 2,000万円 | 2,000万円 | 2,000万円 | |||
傷害治療費用 | 100万円 | 200万円 | 200万円 | |||
疾病治療費用 | 100万円 | 200万円 | 200万円 | |||
賠償責任 | 2,000万円 | 2,000万円 | 2,000万円 | |||
携行品損害 | 20万円 ※免責3,000円 | 20万円 ※免責3,000円 | 20万円 ※免責3,000円 | |||
救援者費用 | 100万円 | 200万円 | 200万円 | |||
キャッシュレス診療 | 対応 | × | 対応 | |||
保険期間 | 最長3ヶ月 | 最長90日間 | 最長90日間 | |||
特徴 | リボ専用の為利用注意 |
JCB EITは年会費完全無料で良いのですが、リボ専用カードの為、カード利用時はリボ手数料に注意が必要です。(毎月の支払い設定額内の利用なら問題無し)
Oricoの2枚はキャッシュレス診療に対応していないので注意が必要です。
龍馬カード、LiSAカード、ソードアート・オンラインカードはカード自体が癖が強いですが保険用としては良カードです。
これら6枚合算で傷害・疾病治療費用は1,100万円になり、前述の5枚と併せると1,950万円の補償になります。
補償金額の合算とおすすめのカードを紹介しましたが、注意点があります。
上記の補償はクレジットカードを保有している本人のみ対象であることです。
ひとり旅であれば問題ありませんが、友人あるいは家族と旅行に出かける時に、その同行者は保険の対象となりません。
クレジットカードの海外旅行傷害保険は、保険の対象として「本会員(カードを保有している本人)」以外に「家族会員」と「家族特約」という設定があります。
家族の保険をカバーしたい場合はこれらを考慮する必要があります。
家族の海外旅行保険についてはこちらの記事↓をご覧下さい。
クレジットカードの死蔵は辞めよう
クレジットカードを保険や特定の特典の為だけに保有し、決済に利用しないことを「死蔵」と言います。
例えばANA VISA nimocaカードを発行して、年会費811円(マイ・ペイすリボ割引適用、年1回以上の決済が必要)で、毎年1,000マイルもらう、なんていうことをしている方もいらっしゃいます。
しかし、発行したカードを完全に死蔵しておくのは私はオススメしません。
理由は、クレジットヒストリーと呼ばれる信用情報機関のデータに「カードを使っていない」という履歴が残ってしまうからです。
これはクレジットカード会社が相互にデータを開示・閲覧できるものなので、これまで自分がカードを発行していない会社からも見れます。
そして、クレジットカード発行会社はカード発行・審査の際に必ずこのデータを見ていて、「この人はカードを発行しても使ってくれない人」とみなされてしまうと新規のカード発行の審査に通りづらくなります。
クレジットカード発行会社からすれば、入会者を集めたり、カードを作成・郵送したり、情報を管理したり、カスタマーサポートを運営したりとカードを発行するには様々なコストがかかっています。
にも関わらず、カードが決済に利用されなかったら発行する意味がありません。(一部の年会費が高額なカードを除いて)
そして、コストに対して収入が見合わなければ当然そのカードの特典内容を変えたり、あるいはカードの発行を止めたりと、いわゆる改悪をせざるを得ない状況になります。
というわけで、クレジットヒストリーには1ヶ月単位で利用したかどうかがわかるようになっていますので、毎月1回はコンビニでも構わないのでカードを利用するように心がけましょう。
クレジットカード付帯の海外旅行保険 ~中級編~
傷害・疾病治療費用が300万円以上のクレジットカード
カードの死蔵を避けるためには、極力保有するカード枚数を減らしたいところです。
しかし、それだと年会費無料のカードではどう頑張っても補償額を大きくすることはできません。
そこで年会費と保険のバランスが良いカードを紹介したいと思います。(もちろんすべて自動付帯です)
カード名 | カード年会費 | 傷害治療補償 | 疾病治療補償 | キャッシュレス診療 | カード特徴 |
---|---|---|---|---|---|
ミライノカードGOLD | 3,240円 ※年100万以上利用で翌年無料 | 500万円 | 500万円 | 〇 | スマートプログラム+2ランク |
Amazon Mastercardゴールド | 10,800円 ※割引後4,320円 | 300万円 | 300万円 | 〇 | Amazonプライム無料付帯 |
dカードGOLD | 10,800円 | 300万円 | 300万円 | × | |
ANA JCBゴールドカード | 15,120円 | 300万円 | 300万円 | 〇 | スーパーフライヤーズ切替可 |
JAL JCB CLUB-A ゴールドカード | 17,280円 | 300万円 | 300万円 | 〇 | JALグローバルクラブ切替可 |
SPGアメックス | 33,480円 | 300万円 | 300万円 | 〇 | SPGゴールド会員 |
MUFGプラチナアメックス | 21,600円 | 200万円~ 600万円 | 200万円~ 600万円 | 〇 | プライオリティ・パス など特典多数 |
JCBプラチナ | 27,000円 | 1,000万円 | 1,000万円 | 〇 | コンシェルジュなど特典多数 |
ミライノカードGOLD
ミライノカードGOLDは住信SBIネット銀行がJCBのライセンスを受けて2017年11月に発行を開始した新しいカードで、年会費は3,240円とゴールドカードの中ではリーズナブルな上、傷害・疾病治療費用は500万円と他の同ランクのカードを圧倒する補償額で、この1枚だけでも充分なレベルです。
加えて、最大の特徴としてスマートプログラムという住信SBIネット銀行の制度のランクを2つ上げられます。
こちら↓の方法と組み合わせると最高のランク4まで昇格し、ATM利用手数料や他行宛て振込手数料が月15回まで無料になります。(年会費も無料にできます!)
自動入金サービスと自動振込サービスを併用すると銀行A→住信SBI→銀行Bといった形で毎月自動的に振込、振替が(しかも無料で)できるようになり、住宅ローンや自動車ローン、幼稚園や習い事などの振込がラクになります。
銀行の手数料が値上がり傾向の中で、他社を圧倒するサービスです。
また、ミライノカードGOLDは海外旅行保険の家族特約も傷害・疾病治療費用250万円と他社のプラチナカード並みのスペックです。
年会費はかかりますが、3,240円という低料金で充実の海外旅行保険が自動付帯+住信SBIネット銀行の活用でものすごく便利になります。
Amazon Mastercardゴールド
Amazon Mastercardゴールドは、年会費3,900円(税込)のAmazonプライム会員が無料付帯されるカードです。
Amazon.co.jpでの買い物にこのカードを利用すると2.5%分のポイントをもらえますが、こちらの記事↓で紹介した通りnanacoをうまく活用できる方はAmazonギフト券購入の方がお得です。
Amazon Mastercardゴールドは通常年会費10,800円ですが、マイ・ペイすリボ割引とWEB明細書割引の適用で4,320円となり、Amazonプライムの年会費+420円で持つことができます。
Amazonプライムに既に加入している人であれば、420円のコストで傷害・疾病治療補償が300万円も付帯される(さらに家族特約もあり)と考えると滅茶苦茶お得なカードです。
発行元は大手三井住友カードで、実はこのカードの海外旅行保険は三井住友カードのプロパーのゴールドカードと同じものです。
カードには他にも空港ラウンジが使える特典も付いていて、420円で持てるゴールドカードかつ海外旅行保険が自動付帯のカードとしてハイパフォーマンスです。
入会の際はいきなりゴールドカードではなく、Amazon Mastercardクラシックを発行して入会特典のポイントをもらってからゴールドに切り替えるのがお得です。
dカードGOLD
dカードGOLDは年会費10,800円(税込)ながら、ドコモの料金の10%分のdポイント還元、ケータイ補償3年、空港ラウンジなどの特典があり、ドコモユーザーにものすごくお得なカードです。
傷害・疾病治療費用300万円に加えて賠償責任5,000万円、携行品損害50万円、救援者費用500万円といずれの補償も高額かつ海外航空便遅延費用特約も自動付帯とこれ1枚でかなりの額を確保できるカードです。
一点残念なのはキャッシュレス診療に対応していない為、医療費が高額になった場合に一時的に自己負担が発生してしまいます。
ANA/JAL JCBゴールドカード
ANA JCBゴールドカードとJAL JCB CLUB-Aゴールドカードはマイルを貯めている方に人気のカードとして取り上げました。
年会費は高めですが、それぞれANAやJALでの特典も付帯されているカードで、かつJCBということで自動付帯の海外旅行保険の補償額も大きいのが特徴です。
とかくANAカード派の方には、VISAかマスターカードの方がこちらの記事↓でも紹介しました年会費割引技が使えるため人気ですが、2019年春にはJCBもリボ契約者向けの年会費割引サービスを始めるようですので、今後の動向に注目しています。
SPGアメックス
「SPGアメックス」は年会費が33,480円と高額ですが、高級ホテルに無料で宿泊できる超お得なカードです。
海外旅行傷害保険は、傷害・疾病治療費用が本会員300万円です。
マリオットグループのゴールド会員、毎年無料の宿泊1泊、3%分のポイント還元、その他アメックスのリターンプロテクションなどの充実の保険なども付帯されている非常に魅力的なカードです。
- 毎年1泊の無料宿泊プレゼント:ウェスティンやシェラトンなどのスターウッド系列ホテルに毎年無料で宿泊できる(ただし入会初年度は対象外)
- ポイントを貯めて無料宿泊:クレジット決済などでポイントを貯めると、そのポイントで無料宿泊できる(スターウッド、マリオット、ザ・リッツカールトンのホテルが対象)
- ゴールド会員特典:無料で部屋のアップグレードを受けられたり、最大14時のレイトチェックアウトができたりする上級会員になれる
- 様々なマイルに交換:貯めたポイントは様々な航空会社のマイルにも交換可能(2万ポイント→2.5万マイル)
- 紹介経由の入会でお得:友達紹介で入会すると12,000ptを貰え、紹介した人も10,000pt貰えるので、夫婦や家族で入会するとめちゃくちゃお得になる
- SPGホテルでお得:ホテル宿泊費をSPGアメックスで支払うとボーナスポイントが貰え、SPGホテル内レストラン利用時は15%OFF
- 充実のカード特典:海外旅行保険や海外緊急アシスタントサービス、手荷物無料宅配やリターンプロテクションなどアメックスの充実した特典も付帯
SPGアメックスについて詳しくはこちら↓
MUFGプラチナアメックス
MUFGプラチナアメックスは三菱UFJニコスが発行するプラチナカードです。
年会費21,600円と他のカードよりも高額ですが、プライオリティパスが家族カードにも付帯、自宅と空港間の手荷物宅配が無料、マイル還元率が2.4%(JAL、シンガポール航空など)、レストランの1名分コース代金無料、コンシェルジュサービスなど特典が優れているのに加えて、デュアルスタイルの発行で海外旅行保険をかなり手厚くすることが可能(傷害・疾病治療費用 600万円)です。
詳しくはこちら↓の記事をご覧ください。
JCBプラチナ
JCBプラチナは、年会費が27,000円と非常に高額ですが、非常に評判の良いJCBのプラチナコンシェルジュが使える他、プライオリティ・パス、レストランの1名分コース代金無料、ホテルの割引サービスなどの特典に加えて、傷害・疾病治療費用が1,000万円と他を圧倒、年会費が14万円オーバーのアメックスプラチナカードと同じ水準の海外旅行傷害保険が魅力です。
カード発行の際はこちら↓の方法を使うと数千円~1万円以上お得になります。
年会費無料のカードでも補償を充実させることはできますが、「保険の為だけにカードを持つ」ことになりかねません。
これらのカードのいずれか1枚、そして先ほどのエポスカード(あるいはエポスゴールドカード)と組み合わせれば2枚のカードだけで海外旅行保険がかなり充実します。
年会費はかかりますが、多くの補償に加えて充実した特典も付いてきますので、自分に合った組み合わせを見つけられると良いと思います。
海外旅行保険に都度加入するという選択肢
クレジットカードのことばかり書いてきましたが、ここで改めてクレジットカードと海外旅行保険への加入のそれぞれの補償内容と保険料を比較してみたいと思います。
都度加入するパターンの保険会社はリーズナブルなプランがウリのジェイアイ傷害火災保険のt@biho(たびほ)を、クレジットカードは前述の年会費無料のカード5枚合算の場合(エポス、REX、横浜インビ、プラスハッピーBooking.com)で比較しました。
たびほについてはハワイ7日間(18~49歳と60~69歳)、アフリカ7日間(18~49歳)の3パターンを出してみました。
たびほ | クレジットカード | |||
---|---|---|---|---|
ハワイ・7日間 | アフリカ・7日間 | |||
18~49歳 | 60~69歳 | 18~49歳 | ||
傷害死亡 | 3,000万円 | 2,000万円 | ||
傷害後遺障害 | 3,000万円 | 2,000万円 | ||
疾病死亡 | 1,000万円 | - | ||
治療費用 | 1億円 | 850万円 | ||
救援費用 | 750万円 | |||
緊急歯科医療 | 10万円 | - | ||
個人賠償責任 | 1億円 ※免責なし |
1億500万円 ※免責なし |
||
携行品損害 | 30万円 ※免責なし |
100万円 ※3,000円/カード毎 |
||
航空機寄託 手荷物遅延 |
1万円 | - | ||
弁護士費用等 | 100万円 | - | ||
テロ等対応 | 1万円/日 | - | ||
保険料 | 3,650円 | 5,540円 | 4,260円 | 無料 |
結果を比べるとハワイよりアフリカの方が保険料が高くなっており、これは医療費というよりもリスクの高さが反映されているのだと思います。
保険会社によっては治療・救援費用を無制限にできるプランもありますが、たびほの場合は1億円が上限です。(それでも充分です)
年齢が上がるほど保険料が上がるものの3パターンのいずれも7日間の観光旅行でおおよそ3,000~5,000円台という結果になりました。
クレジットカードの保険料はもちろん無料です。
補償内容についてはほとんどの項目でクレジットカードの方が劣っているものの、致命的なのは治療・救援費用がたびほ1億円に対してクレジットカードは750万と850万円ぐらいで、逆に携行品損害は5枚合算の効果で(免責は発生するものの)クレジットカードの方が良い結果となりました。
やはりという感じですが、
- たびほであれば1回の旅行で数千円かかるものの治療・救援費用の心配なし
- クレジットカードなら年に何回どこに旅行に行っても無料、ただし治療・救援費用は750~850万円程度(それ以上の費用が発生する可能性は限りなく低い)
というわけで、治療・救援費用をどれだけ求めるかによって保険加入かクレジットカードかわかれるところだと思います。
独身の方で、年に1~2回ぐらいしか海外にいかないようであれば保険加入という選択肢も悪くないというかむしろその方がいいのではないかと感じるところです。
たびほには、クレジットカード保有者向けに特定の補償だけを付けられる「クレカ・プラス」というサービスがあります。
前述のハワイ・7日間の旅行の場合、治療・救援費用を無制限の内容のみなら2,200円という格安料金で加入できます。
他の補償はクレジットカードで充分という場合はこちらのサービスが最適です。
まとめ
まとめです。(毎度長くて恐縮です。)
クレジットカード付帯の海外旅行傷害保険のメリットとデメリットをまとめました。
メリットとデメリット
- 年会費無料のカードで固めればタダで補償を付けられる(複数枚の合算可)
- 加入手続き不要で保険が受けられる(面倒な手続きも加入忘れも無し)
- 年に何回旅行に行っても有効
- 保険金額に上限がある(特に傷害・疾病治療と救援費用が少ない)
- クレジットカードを複数枚持つ必要がある(またはプラチナ級のカードが必要)
- 子供の補償を受けるためには年会費無料のカードでは不十分(別途記事をご覧下さい)
- 保険期間が最大90日なので長期滞在には向かない
- クレジットヒストリーをクリーンに保つために月1回は保有全カードを利用しましょう
一方で、一般の海外旅行保険にあるような無制限プランがないため、複数枚のクレジットカードを持ったとしても補償金額は限りがあります。
海外旅行保険はバラ掛けあるいはカスタマイズという形で、一部の補償だけ手厚くすることも可能ですので、クレジットカードで足らない部分をバラ掛けで補てんするというやり方もあります。
最後になってしまいましたが、今回は一方的に特定のクレジットカードを取り上げて話を進めてきました。
ですが、この記事をお読みの方は既にお持ちのカードも1枚はあるのかと思います。
海外旅行保険の内容については、クレジットカードの公式サイトまたはカード発行した時にカードが入っていた封筒に約款が同封されていると思います。
ぜひ一度ご覧頂ければ、新しい気づきがあることと思います。
次回は子供や家族との海外旅行におけるクレジットカード付帯保険について紹介します。
コメントを残す