2015年7月にトヨタ自動車が売り出した「AA型種類株式」。
マスメディアで「元本保証かつ最大利回り2.5%」という内容で大きく取り上げられ話題になりました。
こちらはそのAA型種類株式を買付けた私がその後の配当金や配当支払い日、税金や確定申告についてレポートする記事です。
Contents
トヨタ自動車 AA型種類株式とは?
まず「種類株式」について説明します。
企業は「普通株式」と呼ばれるいわゆる一般的に発行されている株式とは別に、”権利の内容が異なる株式”を発行することもでき、この株式を「種類株式」と言います。
株主は株式を保有すると、株主総会での議決権や配当を受ける権利を有しますが、普通株式においては1株の権利はどれも同じ、平等です。
これに対して、例えば株主総会での議決権が無い代わりに配当金を多く受け取れる株式(優先株式とも言われます)といった種類株式があったりして、アメリカでは盛んに活用されています。
日本では聞き馴染みが薄いですが、今回のトヨタ自動車の種類株式(種類株式とは? )の発行により、今後広がりを見せるかもしれません。
AA型種類株式
トヨタ自動車が発行したAA型種類株式は、以下のような内容です。
区分 | 非上場株式 |
発行価格 | 1万598円 |
単元 | 100株 |
募集株数 | 4710万株 |
売買 | 当初5年間は売却できない(個人間の売買も不可) 2020年10月1日以降の半年に1度、普通株式への1:1での転換 or 2020年9月1日以降の四半期に1度、発行価格での買戻し要求が選択可能。 発行価格での買戻し要求は、トヨタ自動車が倒産や経営危機になったり、天変地異など特殊な要因を除く。 |
議決権 | 普通株式と同様 |
配当金 | 1年目0.5%~ 毎年0.5%ずつアップ 5年目以降2.5% |
手数料 | 購入時及び維持管理手数料は無料 売却ではなく普通株式への転換をする場合、普通株式の売却時に手数料がかかる |
非上場株式ですので、市場での自由な売買はできません。売買できるのは、予め決められたタイミングになります。
ただし、手放す時に普通株式の株価が発行価格より高ければ普通株式に転換、発行価格より安ければトヨタ自動車に買戻してもらうことで、ほぼ元本を保証しながら、売却益を得るチャンスもあります。
105.98万円で100株を購入すると、初年度5,200円、5年目以降 26,400円の配当金が得られる上に、特別な事由がない限り元本が保証されます。
5年目以降いつまでこの株式を発行し続けるかは発表されていないですが、もし10年続けば5年間 26,400円という配当金を受け取れることになります。
株式という名前は付いていますが、利回りの高い社債という捉え方もできると思います。
また、議決権も普通株式と同様にありますので、株主総会にも出席できます。
デメリットとしては、原則5年間は売却できません。また、発行価格も当時の株価の130%というかなり高めの設定になっていて、今後それ以上の株価になる可能性は低いと言わざるを得ません。
従って、キャピタルゲイン(売却損益)よりはインカムゲイン(配当益)狙いでの購入、投資資金よりは貯蓄資金での購入が多いと思われます。
また、仮にある年度で予定の配当ができなかった場合は、同額の配当を翌年以降に繰り越す条項もあります。逆に、普通株式がどれだけ増配になっても、AA型種類株式の配当金が増配されることはありません。
さらに、少し細かいですが配当金は再投資されませんので、単利ということになります。
ちなみにAA型とは、トヨタ自動車の前身、豊田自動織機が1936年に販売開始したトヨタ初の量産乗用車の名前です。
申込み殺到!
こちらの種類株は野村証券のみでの販売でしたが、トヨタ自動車のブランド力とほぼ元本保証なのに高めの利回りということで、申込が殺到したようです。
銀行に預けていれば良くても0.1~0.2%というご時世にあって、配当利回りの高さが人気の理由となったようです。
野村証券は新規口座開設者を優先したようで、長年野村証券と付き合ってきた個人投資家であっても希望の株数すべてを購入できないこともあったようです。
トヨタ新型株が発売、申し込み殺到 元本保証で高利回り(by 産経ニュース)
非上場株式の税金
非上場株式は上場株式と税金のルールが異なり、AA型種類株式も例外ではありません。
まず、売却益が出た場合
譲渡所得
20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%ならびに住民税5%)の申告分離課税で、確定申告が必要です。
配当金を受け取った時
配当所得
20.42%(所得税および復興特別所得税)が源泉徴収され、総合課税の対象として確定申告が必要です。
ただし、他に確定申告する必要がない場合で、配当所得が「10万円 × 配当計算期間の月数 ÷ 12」以下の場合は確定申告は不要、住民税の申告のみでOKです。
また、普通株式に転換する場合、普通株式は特定口座やNISA口座には入れられず、一般口座に入れる必要があります。
ふるさと納税のワンストップ特例は利用できなくなります
AA型種類株式を購入すると、配当金に対する確定申告または住民税の申告が必要になり、ふるさと納税のワンストップ特例が利用できなくなりますのでご注意下さい。
初の中間配当が決定!配当支払開始予定は(2015年)11月27日
※2015年11月5日更新
本日、トヨタ自動車の第2四半期決算が発表されました。
売上高 14兆914億円(前年同期比9%増)
営業利益 1兆5834億円(前年同期比17%増)
連結純利益 1兆2581億円(前年同期比12%増)
ガソリン安を受けて北米市場で利幅の大きいピックアップトラックなどの販売が伸びたことや、円安に伴う円建ての収益改善効果が利益を押し上げた。 (日経新聞より抜粋)
というわけで、可もなく不可もなく、中国への不安を考えれば下期の予想も含めてまずまずだったのではないでしょうか。
気になる配当金は?
トヨタAA型種類株式の中間配当金は100株当たり2,600円と発表されました。
当初から初年度年間で0.5%(売出価格 10,598円)の配当を約束されていましたのでちょうどその半分が中間配当となります。
また、通常株式の中間配当金は100株当たり1万円と発表されました。リスクを背負ってると違いますね。
トヨタAA型種類株式の中間配当金が1万円になるのは3年後。じっくり待ちましょう。
2015年の確定申告完了!
※2016年3月8日更新
AA型種類株式を購入したことによって、芋づる式に色々と申告が必要になってしまいましたが、完了しました。
色々お得になりました。
2016年3月期 決算を発表!配当支払開始予定日は2016年6月2日
※2016年5月14日更新
今週、トヨタ自動車の2016年3月期の決算が発表されました。
結果は過去最高を3年連続で更新する好決算。
売上高 28兆4031億円(前年同期比+4.3%)
営業利益 2兆8539億円(+3.8%)
税引前純利益 2兆9833億円(+3.1%)
純利益 2兆3126億円(+6.4%)
ただし、同時に発表した今期の計画は円高が原因となり、5年ぶりの減益となる見通し。
100株当たり配当金は
AA型種類株式 期末 2,600円 年間 5,200円
普通株式 期末 11,000円 年間 21,000円
となりました。普通株式の今期の配当予想は未発表です。
株価はAA型種類株式の発行価格決定時点の8,153円より大幅に下落して、5月13日終値で5,454円となっています。
普通株式の配当は今期減配の可能性もあることから、インカムゲイン狙いの人にとってはAA型種類株式のメリットを享受できている状況と言えます。
2017年3月期 上半期決算を発表!配当支払開始予定日は2016年11月29日
※2016年11月30日更新
今週、トヨタ自動車の2017年3月期の2Q決算が発表されました。
売上高 13兆705億円(前年同期比 -7.2%)
営業利益 1兆1,169億円(同 -29.5%)
純利益 9,462億円(同 -24.8%)
円高の影響をもろに受けて、昨年比減収減益の結果となりました。
100株当たり配当金は
AA型種類株式 中間配当 5,250円
普通株式 中間配当 10,000円 (昨年 10,000円)
となり、AA型種類株式は予定通り 0.5%(年間配当利回り 1.0%)、普通株式は減益ながら昨年と同じ配当金となりました。
株価は11月29日終値で6,640円と、春先よりも持ち直していますが、AA型種類株式の発行価格決定時点の8,153円よりは大幅に低い状況が続いています。
ただ、異常に円高に振れていた状況から抜け出し、再び上値を試す展開となってますので、今後が楽しみですね。(とは言え、早くても売れるのは4年後ですが)
2017年3月期決算を発表!配当支払開始予定日は2016年5月25日
※2017年5月12日更新
今週、トヨタ自動車の2017年3月期の決算が発表されました。
売上高 27兆5972億円(前年同期比 -2.8%)
営業利益 1兆9944億円(同 -30.1%)
純利益 1兆8,311億円(同 -20.8%)
上半期は円高の影響をもろに受けていましたが、下半期はトランプラリーのおかげもあって円安に転じたことで、売上高は盛り返しました。
しかし、利益はついてきておらず、また年間世界販売台数もフォルクスワーゲンに負けて2位に陥落するなど、厳しい年となりました。
100株当たり配当金は
AA型種類株式 期末配当 5,250円 (年間 10,500円)
普通株式 期末配当 11,000円 (年間 21,000円)
となり、AA型種類株式は予定通り 0.5%(年間配当利回り 1.0%)、普通株式は減益ながら昨年と同じ配当金となりました。
株価は5月12日終値で6,047円と、2Q決算時よりも下げています。
今期の業績予想がかんばしくないことからも、成長性に対しての厳しい見方が現れていそうです。
AA株式を300株持っていますが、配当金の確定申告が必要なのでしょうか?その場合どの様にすれば良いのかご教授下さい。株は全くの素人なので宜しくお願いします。
>木澤さん
コメントありがとうございます。
私も勉強してる身でございまして、恐らく以下の回答で合ってると思いますが、その点ご了承ください。
もし、自営業ではなくいわゆるサラリーマン(年末調整を受けている)で、他に確定申告するものがない状況(例えば、ふるさと納税をしていない、医療費控除を受けるつもりがないなど)でしたら、確定申告は不要です。
但し、AA型株式以外の株式を保有している場合、あるいは副業をしている場合は注意が必要です。
株式の売却益や配当益、副業による利益など、給与所得以外の所得の合計が20万円以上になる場合は、確定申告が必要になります。
例えば5年後、AA型株式の利回り2.5%になった時に木澤さんが受け取る配当金は
(3月期末配当 132円 + 9月中間配当 132円) × 300株 = 79,200円
ですので、この時給与所得以外の所得が12.1万円以上あると、合計20万円以上となり確定申告が必要になります。
(ちなみにAA型株式を400株保有している場合は、非上場株式の配当金が年間10万円以上になり、他の所得に関わらず確定申告が必要になります)
また、本稿でも触れている通り、確定申告は必要でない場合でも、非上場株式(AA型株式が該当)による配当金を受け取った場合は(市区町村への)住民税の申告が必要です。
確定申告は本来、所得税に関する申告で、住民税の申告は別物です。確定申告をすると税務署から市区町村に情報が流れるので住民税の申告が不要になっているだけです。
住民税の申告の方法についてはお住まいの市区町村のホームページをご覧下さい。
また、昨年分の申告をされていないようでしたら、市区町村の窓口に相談されると良いかと思います。
ちなみに、AA型株式の配当を受け取る際に所得税として20.42%の源泉徴収をされていますが、確定申告をあえてする(確定申告不要であっても申告することはできます)ことで給与所得の金額によっては少し還付される可能性があります。
したがって、どうせ住民税の申告をしないといけないなら確定申告をするという選択肢もでてきます。
配当金の税金の還付については、こちらの記事が参考になります。
https://biz.moneyforward.com/tax_return/basic/final-tax-return-cash-dividend/
以上の説明で足りますでしょうか。